特許マップとは

更新日 : 2005-07-05

そもそもパテントマップとは何なのか? 特許庁や工業所有権情報・研修館に掲載されている特許マップ・パテントマップの定義などを紹介して、パテントマップの3大要素について解説を加えています。

 

パテントマップの定義

 

よくパテントマップ、特許マップという言葉を聞きます。

聞いて分かったような、それでいて分からないような曖昧な言葉です。

さて、それではパテントマップとは何か?と言われると、特許庁の技術分野別特許マップや特許流通支援チャート(工業所有権情報・研修館)の説明部分を抜粋すると、

初めての海に船を出す船乗りが正確な海図を必要とするように、経営者が新たな研究開発投資や技術導入を行う際には、「特許マップ(あるいはパテントマップ)」とよばれる「特許の地図」を持っているかどうかが成功の鍵を握るものとなる。

(中略)

しかしながら、これまでに蓄積された特許情報の量は膨大であり、そのすべてについて、そのまま利用することは効率的でない。そこで、それぞれの利用目的に応じて特許情報を収集し、分析し、加工・整理することにより、視覚的に受け入れられるものとすることが行われている。

このように、特許情報を整理・分析・加工して図面、グラフ、表などで表したものが「特許マップ」である。
[出所:特許マップとは(機械6 焼却炉技術)]

特許情報を分析し、その動向等をビジュアル化したものを一般的にパテントマップと呼んでいますである。
[出所:特許流通支援チャートのご案内]

とあります。

特許庁および工業所有権情報・研修館で掲載されている定義をまとめると、

  • 特許情報
  • 調査・整理・分析
  • 視覚化・ビジュアル化

がパテントマップの必須3要素となります。

 

パテントマップの3要素

 

1つ目の特許情報は、特許調査・技術調査で説明しているように、技術情報としての側面と、権利情報として側面の2つの側面を有しています。

これから作ろうとしているパテントマップ(特許マップ)は、技術情報としての特許情報をまとめたパテントマップなのか? それとも権利情報としての特許情報をまとめたパテントマップなのか? 特許情報のどちらの側面に重点を置いているのかをしっかりと把握する必要があります。

2つ目の調査・整理・分析は、3要素の中でも最も重要な点です。なぜならばパテントマップの作成目的に応じて、調査のやり方、調査結果の整理の仕方が異なってくるからです。

単純に競合他社のA社、B社、C社と自社の出願件数を把握したい、というレベルであれば調査において特許公報をじっくりと読み込んで分類分け・整理する必要はありません。

しかし、ある技術に関する特許出願動向を知りたい場合、例としてフラットパネルディスプレイ(FPD)の特許出願動向を知りたい場合は、フラットパネルディスプレイの構造に関する特許なのか? パネルの製造方法に関する特許なのか? それとも素子駆動の制御技術なのか? などなど様々な技術的観点を設けて特許公報を読み込み、分類分け・整理する必要があります。

2つ目の調査・整理・分析は、パテントマップを作成する際に、パテントマップ作成の目的と直接結びつきますので、非常に重要な要素です。

3つ目の視覚化・ビジュアル化は、2つ目の調査・整理・分析を行った結果をいかに分かりやすく見せるか、まとめるかということになります。この視覚化・ビジュアル化は、パテントマップを作成して誰に見せるのか、ということを念頭におく必要があります。

経営者に見せるのか? 技術者・エンジニアに見せるのか? IR(Investor Relations)の一環として投資家に見せるのか? などなど、パテントマップを見せる対象によって作成するパテントマップの種類も異なってきます。経営者や投資家向けであれば、特許情報の細部について視覚化するよりも出願件数の推移や自社と競合他社の出願件数の比較などマクロ的視点でマップを作成した方が良いでしょう。技術者向けであれば、マクロ的なマップも必要ですが、より細かな技術情報をあぶりだせるような視覚化・ビジュアル化を行うべきです。

パテントマップの3要素について説明してきましたが、ちまたでは単なる統計グラフのことをパテントマップと呼んでいる場合もあります。特許庁の定義からすれば、特許情報を図面・グラフ・表などで表していれば良いわけですから、パテントマップに違いはないわけです。

しかし、パテントマップを作れば良い、というわけではありません。パテントマップはあくまでも特許情報を可視化するための1つの手段です。可視化するためには2つ目の調査・整理・分析をしっかりと行うことが必要であるという点をしっかりと認識する必要があります。

またパテントマップと一口に言っても、特に決まった形式があるわけではありません。目的に応じてパテントマップの形も変化します。どういう目的で、誰に対してどのような特許情報分析結果を提示したいのか? 目的・対象を明確に認識する必要があります。

最後に一番重要な点として、パテントマップとは作ることが目的そのものではなく、作ったパテントマップをもとにどういうメッセージを発信できるか? というツールの1つであることを強調しておきたいと思います。

追記:2019年11月
パテントマップの入門や実例として Patent Fast Report を参考にされるのも良いかと思います。