パテントマップの種類

更新日 : 2005-09-04

パテントマップには様々な種類があります。大別すれば統計解析パテントマップと内容解析パテントマップに分けられます。特許庁の技術分野別マップやパテントマップに関する特許公開公報など具体例を交えて、様々な種類のパテントマップについて説明しています。

 

統計解析マップと内容解析マップ

 

パテントマップを大きく分けると、

  • 統計解析パテントマップ
  • 内容解析パテントマップ

の2つに大別されます。

統計解析パテントマップとは、日付データ(出願日、公開日、公告・登録日など)や特許分類データ(IPC、FI、Fタームなど)といった書誌的事項に掲載されているデータを用いて、Excel等の表計算ソフトを用いて統計解析を行って作成するマップです。

内容解析パテントマップとは、特許公報に開示されている技術内容について作成するマップです。研究テーマの絞込みなど研究開発段階で行う特許出願動向調査のような場合、特許情報を技術情報として捉えますので、【要約】、【課題】、【解決手段】、【作用・効果】、【実施例】などを重点的に読み込んでマップ化します。また実際に開発した製品を市場投入する際に行う侵害防止調査(クリアランス調査)では、特許情報を権利情報として捉えますので、【特許請求の範囲】、つまりクレームを重点的に読み込んでマップ化する必要があります。

統計解析パテントマップと内容解析パテントマップの2つに大別される、と書きましたが、実際には無料のパテントマップで紹介したようなマップは、特許公報を読み込んで技術内容別に分類分けを行い(=内容解析パテントマップ)、その結果を統計解析しています(=統計解析パテントマップ)。

もっと厳密に定義すれば、

  • 特許公報の技術内容・権利内容を読み込まないパテントマップ(=統計解析パテントマップ)
  • 特許公報の技術内容・権利内容を読み込んだパテントマップ(=統計解析パテントマップ・内容解析パテントマップ)

のように分けられるかと思います。

特許公報の技術内容・権利内容を読み込まない統計解析パテントマップであっても、ある技術に関してどのような企業がいつごろから何件ぐらい出願しているのか、といった大まかな出願傾向をつかむことは可能です。いきなり特許公報の技術内容・権利内容を読み込んだ統計解析パテントマップおよび内容解析パテントマップを作成するのではなく、特許公報の技術内容・権利内容を読み込まない統計解析パテントマップでマクロな出願傾向を把握した上で、特許公報の技術内容・権利内容を読み込んだ統計解析パテントマップおよび内容解析パテントマップを作成した方が効率的な場合もあります。

 

統計解析マップの種類

 

主な統計解析マップの種類をまとめると以下の表のようになります。

 

表 統計解析マップの種類
マップ名 主なデータ項目(例) Excel
グラフの種類
件数推移マップ 【x軸】出願件数、公開件数、登録件数、審査請求数、請求項数など
【y軸】出願日、公開日、登録日など
集合縦棒、折れ線グラフ、3-D面グラフなど
ランキングマップ 【x軸】出願人、発明者など
【y軸】出願件数、公開件数、登録件数、審査請求数、請求項数など
集合横棒
構成比マップ
シェアマップ
出願人、技術内容など 100%積み上げ縦棒、100%積み上げ面グラフ、円、ドーナツ
マトリックス表示マップ 【x軸】技術など
【y軸】課題など
【z軸】件数など
3-D縦棒グラフ、バブルチャートなど
レーダーチャート表示マップ 技術内容など レーダー
分布表示マップ 【x軸】パラメータなど
【y軸】技術内容など
【z軸】出願件数、出願人数など
散布図、等高線

 

があります。主なデータ項目を例として挙げていますが、あくまでも一例で掲載しているデータ項目以外のデータをx軸、y軸、z軸に取ることが可能です。データ項目として用いることが出来るのは、書誌的事項や特許調査の際に技術内容ごとに分類分けを行った項目になります。

また表にはExcelのグラフの種類も掲載しています。お分かりいただけると思いますが、全てのパテントマップはExcelで用意されているグラフで作成することが出来ます。

 

内容解析マップの種類

 

内容解析マップの代表的なものは以下の2つです。

  • 技術発展マップ、技術変遷マップ
  • 構成部位マップ

上記2つのパテントマップは内容解析マップの代表的なものです。以下に特許庁の技術分野別マップのサンプルとマップの説明をまとめています。

表 内容解析マップの種類
マップ名 マップの説明
技術発展マップ
技術変遷マップ
ある特定の技術分野の特許を出願年・公開年・登録年などに沿って並べ、ある特定技術の発展の流れを示したマップ。
※特許の技術内容を読み込んだ上で、特許同士のつながりを見出していく(例えば、【解決すべき課題】などに着目し、同一の【解決すべき課題】に対して、どのような【解決手段】を用いて課題を解決してきたか時代の変遷を追うことなどがあります)
※マップ上に配置する特許は登録特許のことが多い。
構成部位マップ 個々の構成要素の組み合わせであるシステムの、個々の構成要素についてどれくらいの出願件数があるか示したマップ。
※例えば、ある特定の出願人(メーカー)に着目してある特定の技術の構成部位マップを作成すると、出願人がその技術のどの構成要素について集中的に出願しているか把握することができる。

技術発展マップ(技術変遷マップ)と類似しているものに、サイテーションマップ(引用特許マップ)があります。

特許を出願年に沿って並べるマップ、という点では技術発展マップ(技術変遷マップ)と同じですが、異なる点は特許同士のつながりの見出し方です。

サイテーションマップ(引用特許マップ)では、登録特許に掲載されている【参考文献】(INIDコードで56)や特許庁電子図書館IPDLの経過情報検索で調べる【引用文献】などから、特許同士の引用・被引用関係を洗い出して特許同士のつながりを見出します。

※学術論文の世界では引用される回数が多い(被引用回数が多い)ほど重要な論文だと見なされています。特許でも似ていて被引用回数が多いほど重要な特許であると見なされます。

パテントマップとはで説明したように、パテントマップに特に決まった形式・表現方法があるわけではなく、上記の内容解析マップで紹介した2つのマップもあくまでも一例です。特許の内容を解析した上で、どのような形でまとめるのが最適なのか、検討・判断する必要があります。