Vol.027(2007-02-20)


■Contents━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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 1:特許検索のネタ

 2:類似特許検索の基礎
  2-1:類似特許検索とは
  2-2:類似特許検索と特許調査の種類

 3:調査観点の抽出
  3-1:類似特許検索マトリックスシート
  3-2:背景技術の抽出
  3-3:発明の課題・目的の抽出
  3-4:発明の技術的特徴および特許請求の範囲の抽出
  3-5:特許検索マトリックスシートの記入

 4:特許検索の鉄則




1:特許検索のネタ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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今回から新しいシリーズを開始します。その名も


『特許電子図書館を使った類似特許検索の方法 〜半導体関連特許を例に〜』


です。


※今回のシリーズは、メルマガ読者の中村ユカさんからリクエストを
 いただきました。中村さんご協力ありがとうございます♪


これまでシリーズでお届けした2足歩行ロボットやパナソニックのフィルタ
お掃除エアコンなどは、ある特定の特許番号を前提とした調査ではなく、
ウェブサイト等に掲載されている技術解説を読み込んで、調査対象技術を
明確化した上で検索を行っていました。

新シリーズでは具体的にある特許を例に取り、その特許の類似特許を探す方法
を解説していきます。今回取り上げる特許は、松下電器産業出願の半導体装置
に関する特許です。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【発明の名称】半導体装置
【公開番号】 特開2005-123458
【出願日】  2003年10月17日
【出願人】  松下電器産業株式会社
【要約】
【課題】マイクロ波帯域からテラヘルツ帯域での特性のバラツキが抑制されて
おり、実装が容易で、高周波信号を空間や外部回路に効率よく伝達することが
可能な半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置100は、基板1と、基板1の最上部に形成された
n型半導体層2Aと、基板1上に互いに離間して形成され、伝送線路を構成
する信号線5および接地線6と、n型半導体層2Aと、信号線5および接地
線6とから構成される発振素子15と、基板1上に形成され、信号線5に
接続された高周波利用回路部11とを備えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】n型半導体層を最上部に有する基板と、
 上記基板上に互いに離間して形成され、伝送線路を構成する信号線および
接地線と、
 上記n型半導体層と、上記信号線および上記接地線とから構成される
発振素子と、
 上記基板上に形成され、上記信号線に接続された高周波利用回路部と、
を備える、半導体装置。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


私は大学・大学院と熱流体力学を専攻していました。半導体については全くと
言って良いほど知りません。今回のシリーズ中に技術的知識不足で、購読者の
皆様に誤った情報をお伝えしてしまう可能性もありますので、ご了承下さい。

しかし、1つだけ言えることは


      「技術に精通していなくても特許検索は可能」
       ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

であるということです。もちろん豊富な技術的知識が必要不可欠なケースも
ありますし、「技術的知識が必要ない」といっているわけではありません。

しかし、メーカーの知的財産部に勤務されている方を例に取れば、様々な技術
分野(ご自分の専門とは別の技術分野も)の出願や調査を行う必要があることで
しょう。その際「技術的知識がないから調査できません」とは言えません。
技術的知識がなくても色々と調べながらやるしかないのです。

今回の半導体関連特許の類似特許検索は、熱流体力学を先行していた発行人=
つまり半導体について素人の私が、どのようにアプローチしていくのか、その
特許検索の流れを見ていただきたいと思います。

特許検索の基本は技術分野を問いません。エアコンであっても、ロボットで
あっても、そして半導体であっても特許検索の考え方は変わりません。



2:類似特許検索の基礎━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2-1:類似特許検索とは?


類似特許検索とは、読んで字の如く「(ある特許と)似ている特許を検索」する
ことです。今回は松下電器産業の特開2005−123458と技術内容が似ている特許
を探していきます。

実はあまり「類似特許検索」という呼び方は使いません。通常だと公知例調査
と呼ぶ方が多いと思います。

※公知例調査の、公知とは「既に世間一般に広く知られていること。周知。」
 (出所:国語辞書・大辞泉)であり、既に公知となっている資料(特許やその
 他の一般技術文献)について調査すること

ある特許(または発明)と似ている特許を探さなければならない、探す必要が
あるケースを考えてみましょう。


◆ケース1

例えば自社にとって都合の悪い競合他社の特許を発見しました。

その他社特許が公開段階(審査請求期間内または審査中)であれば、特許権利化
を阻止するために情報提供を行います。特許庁へ情報提供するためには、他社
特許に類似した特許・技術文献を探す必要があります。

一方、その他社特許が既に登録済みの特許であれば、自社に権利行使してくる
可能性があります。他社からの攻撃に備えるために、自社で他社の登録特許が
無効であることを証明する資料を探す必要があります。


◆ケース2

次にエンジニアの人がある発明をしました。特許出願しようと考えていますが
出願前に、過去に同じような発明がないかチェックする必要があります。
つまりエンジニアの発明(おそらく発明開示書・アイデアシートのようなもの
に記載された発明)と類似した特許を探す必要があります。

※このようなケースでは「先行技術調査」「出願前調査」などと呼びます。


◆ケース3

ある発明開示書に則って特許明細書を書いている方がいるとします。
ゼロベースで明細書を書いていくのは骨が折れます。類似特許を参考にして
明細書を作成すれば効率的になります。

また、ある技術用語の使い方が分からない、という場合などは類似特許を探す
ことで、その技術用語の適切な使い方を知ることができます。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2-2:類似特許検索と特許調査の種類


先ほどから類似特許検索の別称についていくつか出ていますが、整理しておき
たいと思います。あくまでも私個人の考えに基づいた整理であることをご留意
ください。下のチャートは発明から登録までの流れ、それに対応した特許調査
の範囲を示しています。


       ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━>時間
       発明     出願     公開     登録

先行技術調査 ←−−−−−−→
出願前調査  ←−−−−−−→
無効資料調査 ←−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−→
公知例調査  ←−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−→



類似特許検索の別称として大きく、

 ・先行技術調査
 ・出願前調査
 ・無効資料調査
 ・公知例調査

の4つが挙げられます。もっとも概念として広いのが公知例調査です。

先行技術調査と出願前調査はほぼ同義であり、発明が生まれた時点や特許出願
前に行う類似特許検索のことを指します。

無効資料調査は公開特許公報が発行された後、または特許が権利化された後に
その特許を無効化するための資料収集調査を指します。



3:調査観点の抽出━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

━━━━━━━━━━━━━━━━━━3-1:類似特許検索マトリックスシート


それでは早速、今回の調査対象特許・特開2005−123458から調査観点を抽出
していきましょう・・・・

とその前に、これまでも何回か紹介してきた特許検索マトリックスシートを
確認しておきましょう。


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
       |背景技術|  課題・目的 | 技術的特徴  |  構成要件   |
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 キーワード |    |       |       |       |
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 同義語   |    |       |       |       |
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 IPC   |    |       |       |       |
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 FI    |    |       |       |       |
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 Fターム  |    |       |       |       |
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


類似特許検索の場合も、特許を読み込んで

 ・背景技術
 ・発明の課題や目的
 ・発明の技術的特徴
 ・特許請求の範囲の構成要件

を抽出していきます。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━3-2:背景技術の抽出


まず背景技術ですが、


 【発明の名称】半導体装置

 【技術分野】【0001】本発明は、マイクロ波帯域からミリ波帯域、
  さらにはテラヘルツの周波数帯域で動作する半導体装置に関する。

 【背景技術】【0002】近年、情報通信分野における技術の進展は
  著しく、通信機器が扱う周波数帯域もマイクロ波帯域からミリ波帯域へと
  より高い周波数帯域へと変化している。このようなマイクロ波帯からミリ
  波帯までの高周波帯域を扱う通信用回路などでは、高周波信号を発生する
  発振回路あるいは発振素子が重要な回路要素となる。従来、マイクロ波
  帯域での高周波信号の発生には、高周波増幅器に正帰還をかけた発振回路
  や、素子自体が負性抵抗特性を有する2端子素子が用いられている。
  このうち高周波増幅器に正帰還をかけた発振回路の出力は、ミリ波帯域
  から、さらに高周波帯域において高周波増幅器の周波数特性が低下する
  ことがあり、十分な出力が得られないことがある。このため、ミリ波
  帯域以上の周波数では負性抵抗特性を示す2端子素子が多用されている。


のように【発明の名称】【技術分野】【背景技術】などを参考に抽出します。

背景技術が「半導体」であることは、半導体素人の私でも理解できました。
また、【技術分野】を見ると「半導体」の中でも「周波数帯域」が関連しそう
だということも分かります。


さて特許検索マトリックスシートに記入しましょう。


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
       |背景技術 |課題・目的| 技術的特徴  |  構成要件   |
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 キーワード |半導体  |     |       |       |
       |周波数帯域|     |       |       |
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 同義語   |     |     |       |       |
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 IPC   |     |     |       |       |
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 FI    |     |     |       |       |
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 Fターム  |     |     |       |       |
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━3-3:発明の課題・目的の抽出


次に発明の課題・目的の抽出です。これは、


 【要約】
 【課題】マイクロ波帯域からテラヘルツ帯域での特性のバラツキが
  抑制されており、実装が容易で、高周波信号を空間や外部回路に
  効率よく伝達することが可能な半導体装置を提供する。

 【発明が解決しようとする課題】
 【0024】〜【0026】略
 【0027】本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、マイクロ波
  帯域からテラヘルツ帯域での特性のバラツキが抑制されており、実装が容
  易で、高周波信号を空間や外部回路に効率よく伝達することが可能な半導
  体装置を提供することにある。


【要約】の【課題】と、実施例中の【発明が解決しようとする課題】から抽出
します。明細書から抜粋した記載を見ると、【課題】【発明が解決しようとす
る課題】の両方ともほぼ同じことが書いてあります。

この特許の課題・目的としては

 ・高周波帯域(マイクロ波帯域〜テラヘルツ帯域)での特性バラツキ抑制
 ・実装の容易性
 ・高周波信号を空間・外部回路へ効率よく伝達

といったことが挙げられます(特許検索マトリックスシートへの掲載は省略)。


━━━━━━━━━━━━3-4:発明の技術的特徴および特許請求の範囲の抽出


最後に発明の技術的特徴と特許請求の範囲の抽出です。


 【要約】
 【解決手段】半導体装置100は、基板1と、基板1の最上部に形成された
  n型半導体層2Aと、基板1上に互いに離間して形成され、伝送線路を
  構成する信号線5および接地線6と、n型半導体層2Aと、信号線5
  および接地線6とから構成される発振素子15と、基板1上に形成され、
  信号線5に接続された高周波利用回路部11とを備えている。


 【請求項1】
  n型半導体層を最上部に有する基板と、
  上記基板上に互いに離間して形成され、伝送線路を構成する信号線
 および接地線と、
  上記n型半導体層と、上記信号線および上記接地線とから構成される
 発振素子と、
  上記基板上に形成され、上記信号線に接続された高周波利用回路部と、
  を備える、半導体装置。


今回の特許では、

  基板 + 信号線・接地線 + 発振素子 + 高周波利用回路部

の4つ組み合わせた半導体装置です。この4つが構成要件であり、この4つの
組み合わせが技術的特徴となります。


━━━━━━━━━━━━━━━━━3-5:特許検索マトリックスシートの記入


特許検索マトリックスシートを回転させた状態にしました。各項目で抽出した
結果を記入していくと、下のようになります。


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
         |  キーワード
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 背景技術   1|  半導体装置
         |━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
        2|  周波数帯域
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 課題・目的  1|  高周波帯域での特性バラツキ抑制
         |━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
        2|  実装の容易性
         |━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
        3|  高周波信号を空間・外部回路へ効率よく伝達
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 技術的特徴  1|  基板(n型半導体層)
 構成要件    |━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
        2|  信号線・接地線
         |━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
        3|  発振素子
         |━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
        4|  高周波利用回路部
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


この抽出したキーワードをベースに、次回以降キーワード・特許分類選定作業
を進めていきましょう。



4:特許検索の鉄則━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

本号の解説の中から鉄則として新たに5つまとめます。


■特許検索の鉄則049

 類似特許検索とは、ある特許と似ている特許を検索することであり、
 別称として先行技術調査、出願前調査、無効資料調査、公知例調査などと
 呼ぶこともある。 


■特許検索の鉄則050

 類似特許検索では、対象特許を読み込んで

  ・背景技術
  ・発明の課題や目的
  ・発明の技術的特徴
  ・特許請求の範囲の構成要件

 について抽出する(下記特許検索マトリックスシートのキーワードに該当)。

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
       |背景技術|  課題・目的 | 技術的特徴  |  構成要件   |
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 キーワード |    |       |       |       |
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 同義語   |    |       |       |       |
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 IPC   |    |       |       |       |
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 FI    |    |       |       |       |
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 Fターム  |    |       |       |       |
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


■特許検索の鉄則051

 背景技術について抽出する場合は、

 【発明の名称】
 【技術分野】
 【背景技術】

 を参考にする。


■特許検索の鉄則052

 発明の課題・目的について抽出する場合は、

 【要約】【課題】
 【発明が解決しようとする課題】

 を参考にする。


■特許検索の鉄則053

 発明の技術的特徴と特許請求の範囲について抽出する場合は、

 【要約】【解決手段】
 【特許請求の範囲】
 【課題を解決するための手段】

 を参考にする。



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特許電子図書館を使った[特許検索のコツ]

   

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2007-01-15 : 更新