Vol.030(2007-05-07)


■Contents━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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 1:特許検索のネタ

 2:類似特許検索:検索式作成のキホン
  2-1:検索式の基本パターン
  2-2:OR演算だけの検索式だと・・・
  2-3:AND演算の使い方を考える(1)
 3:最も簡単な類似特許検索式の作成
  3-1:AND演算の使い方を考える(2)
  3-2:検索式の評価

 3:特許検索の鉄則



1:特許検索のネタ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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前々回から始まった『特許電子図書館を使った類似特許検索の方法〜半導体
関連特許を例に〜』では、具体的にある特許を例に取りその特許の類似特許を
探す方法を解説しています。


取り上げた特許は松下電器産業出願の半導体装置に関する特許です。


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【発明の名称】半導体装置
【公開番号】 特開2005-123458
【出願日】  2003年10月17日
【出願人】  松下電器産業株式会社
【要約】
【課題】マイクロ波帯域からテラヘルツ帯域での特性のバラツキが抑制されて
おり、実装が容易で、高周波信号を空間や外部回路に効率よく伝達することが
可能な半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置100は、基板1と、基板1の最上部に形成された
n型半導体層2Aと、基板1上に互いに離間して形成され、伝送線路を構成
する信号線5および接地線6と、n型半導体層2Aと、信号線5および接地
線6とから構成される発振素子15と、基板1上に形成され、信号線5に
接続された高周波利用回路部11とを備えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】n型半導体層を最上部に有する基板と、
 上記基板上に互いに離間して形成され、伝送線路を構成する信号線および
接地線と、
 上記n型半導体層と、上記信号線および上記接地線とから構成される
発振素子と、
 上記基板上に形成され、上記信号線に接続された高周波利用回路部と、
を備える、半導体装置。
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前回は類似特許検索の裏技編ということで、

  ・発明者
  ・出願人引例
  ・審査官引例

の3つの方法について解説しました。忘れてしまった人は前回のメールマガジ
ンを見てくださいね。


今回から裏技ではなく、本シリーズ第1回目で作成した特許検索マトリックス
シートをベースにした正統的な類似特許検索方法の解説に戻ります。


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         |  キーワード
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 背景技術   1|  半導体装置
         |━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
        2|  周波数帯域
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 課題・目的  1|  高周波帯域での特性バラツキ抑制
         |━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
        2|  実装の容易性
         |━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
        3|  高周波信号を空間・外部回路へ効率よく伝達
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 技術的特徴  1|  基板(n型半導体層)
 構成要件    |━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
        2|  信号線・接地線
         |━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
        3|  発振素子
         |━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
        4|  高周波利用回路部
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本号では、類似特許検索における検索式作成の基本を確認していきましょう。



2:類似特許検索:検索式作成のキホン━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2-1:検索式の基本パターン


検索式に関する「特許検索の鉄則」を思い出してください。


  ■特許検索の鉄則022

   検索式の基本パターンは以下の3通り
   1) キーワードのみ
   2) 特許分類のみ
   3) キーワードと特許分類の掛け算


  ■特許検索の鉄則023

   演算子OR・ANDの正確に使う
   OR :同じ概念のものをつなぐ
   AND:異なる概念のものをつなぐ


「特許検索の鉄則22」でも述べたとおり、基本パターンは3つです。


また演算子として OR と AND があります。この演算子の使い方もよく覚えて
おきましょう。単純な例で確認しておくと


           ソックス OR 靴下


は正しく、


           ソックス AND 靴下


は正しくありません(ソックスと靴下は同じ概念だからです)。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2-2:OR演算だけの検索式だと・・・


検索式の基本パターンについて、もう少し細かく検討していきましょう。


検索式を作成する際、キーワードだけのOR演算や、特許分類だけのOR演算と
いうのはあまりないと思います。


なぜならばヒット件数が非常に多くなるからです。


試しに「半導体装置 OR 半導体デバイス」で検索してみてください。


※公報テキスト検索を使って 発明の名称=半導体装置 OR 半導体デバイス
 で検索すると8万件ほどヒットします。
 http://www7.ipdl.inpit.go.jp/Tokujitu/tjkta.ipdl?N0000=108


今回の調査対象公報である特開2005-123458に付与されている2つのIPC

 H01L 47/02 ・ガン効果装置
 H03B  9/12 ・固体装置を用いるもの,例.ガン効果装置

のOR演算「H01L47/02 OR H03B9/12」で検索してみましょう。


実は公報テキスト検索でIPC=「H01L47/02 OR H03B9/12」と検索すると、
102件(5月6日現在)となります。102件であれば頑張って読んでやろう!
という気になりますね(と言っても少し多いかもしれませんが・・・・)


特許公報に付与されているIPCは、特許に開示されている技術内容に沿った
分類なので、このIPCを使って検索すると効率よく類似特許を探し出すこと
ができます。特に登録特許公報に付与されているIPCは特許庁審査官の審査
を経た上で、補正等も考慮された上で検討されたIPCなので使わない理由は
ありません。


今回はたまたま特許分類だけのOR演算のヒット件数が少なかったのですが、
だいたいの場合キーワードだけのOR演算と同じくヒット件数が多くなります。
そこでAND演算を使って件数の絞込みを行っていきます。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2-3:AND演算の使い方を考える(1)


2-1でAND演算とは「異なる概念のものをつなぐ」ことであると説明しました。


始めに抽象的かもしれませんが、例を用いてAND演算の使い方を解説していき
ましょう。異なる概念1〜4があります。それぞれの概念にはa〜dのタームが
付与されています。aとa'、a''は同じ概念です。


   製品−−−−−−−−−−−−
   |            |
   | 概念1: a, a', a''   |
   | 概念2: b        |
   | 概念3: c, c'      |
   | 概念4: d, d', d''   |
   |            |
   −−−−−−−−−−−−−


異なる概念1〜4から構成されている製品があります。この製品と同じ概念から
構成されている製品を探し出すにはどうすれば良いでしょうか?


簡単なことですね。概念1〜4を備えた製品を探し出せば良いのです。


つまり式として表現すれば


 製品 = 概念1 and 概念2 and 概念3 and 概念4

      =探し出したい製品


になります。概念1〜4に付与されているタームがありますから、タームに置き
換えると、


 製品 = a and b and c and d

      =探し出したい製品


となります。さらにa'、a''などの同じ概念のタームを考慮すると


 製品 = (a or a' or a'') and b and (c or c') and (d or d' or d'')

      =探し出したい製品


ORを+(プラス)、ANDを*(アスタリスク)で表現すれば


 製品 = (a+a'+a'')*b*(c+c')*(d+d'+d'')


となります。AND演算は異なる概念同士を掛け合わせるときに用いて、OR演算
は同じ概念同士のものをつなぎ合わせるときに用いる、特許検索の鉄則を適用
してください。


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◆検索式をカッコよく見せる(?)コツ
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上記の検索式

 製品 = (a+a'+a'')*b*(c+c')*(d+d'+d'')

を、もう少しプロっぽく見せるのであれば、それぞれの概念を集合として形成
します。つまり、

 集合名  検索式
  S1   a+a'+a''
  S2   b
  S3   c+c'
  S4   d+d'+d''
  S5   S1*S2*S3*S4

のようにします。こうすることで、概念1〜概念4のタームそれぞれのヒット
件数が分かります。

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3:最も簡単な類似特許検索式の作成━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━3-1:AND演算の使い方を考える(2)


それでは、実際に特許検索マトリックスシートを用いてAND演算の使い方を
見て行きましょう。


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         |  キーワード
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 背景技術   1|  半導体装置
         |━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
        2|  周波数帯域
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 課題・目的  1|  高周波帯域での特性バラツキ抑制
         |━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
        2|  実装の容易性
         |━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
        3|  高周波信号を空間・外部回路へ効率よく伝達
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 技術的特徴  1|  基板(n型半導体層)
 構成要件    |━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
        2|  信号線・接地線
         |━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
        3|  発振素子
         |━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
        4|  高周波利用回路部
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特開2005-123458は上位概念で言えば「半導体装置」であり、技術的特徴・
構成要件で掲載した4つから成り立っています。

(厳密に言えば違うかもしれませんが)それぞれ4つの技術的特徴は概念として
それぞれ別のものであるので、


 基板 and 信号線・接地線 and 発振素子 and 高周波利用回路部


という4つの特徴を持っている「半導体装置」が特開2005-123458の類似特許
になります。まずは公報テキスト検索で


 基板 AND (信号線 OR 接地線) AND 発振素子 AND 高周波利用回路部


という検索式を用いて検索してみましょう。


※信号線・接地線は類似した概念であると見なしてOR演算にしました



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━3-2:検索式の評価


特許電子図書館の公報テキスト検索へ行って、


http://www7.ipdl.inpit.go.jp/Tokujitu/tjkta.ipdl?N0000=108


公報種別は公開特許公報(公開、公表、再公表)のままにして、検索項目選択を
上から4つ「要約+請求の範囲」にします。それぞれに


要約+請求の範囲:基板
         AND
要約+請求の範囲:信号線 接地線  (検索方式:OR)
         AND
要約+請求の範囲:発振素子
         AND
要約+請求の範囲:高周波利用回路部


のように入力して検索ボタンを押しましょう。すると2件がヒットしました。


ヒット件数 2 件 

 1.  特開2005-123458 半導体装置  
 2.  特開2005-123385 半導体装置  


1件は今回の調査対象公報である特開2005-123458。もう1件も内容を見ると、
特開2005-123458と同じく、松下電器産業の出願した特許であることが分かり
ます。


作成した検索式でヒットするのは調査対象公報です。考えてみれば当たり前の
話で、調査対象公報の明細書の記載から特許検索マトリックスシートを作って
いるからです。


検索式を作るときに「調査対象公報が含まれるようになっているか?」を念頭
に置くことが重要です。特に類似特許を探したい場合、調査対象公報がヒット
しない集合に類似特許が含まれている可能性は薄いからです。


しかし、上記の検索式だけでは不十分です。使用したキーワードは対象特許の
明細書で使用されていたキーワードです。つまり、その出願人(今回は松下電
器産業)特有のキーワードである可能性があるからです。

このためにキーワードの同義語を検討したり、特許分類を検討したりします。


今回は類似特許検索の検索式作成の基本について復習しました。また簡単な
検索式を作成してみました。次回は特許分類の検討を行いましょう。



3:特許検索の鉄則━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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本号の解説の中から鉄則として2つを再掲し、新たに4つまとめます。


■特許検索の鉄則022(再掲)

 検索式の基本パターンは以下の3通り
 1) キーワードのみ
 2) 特許分類のみ
 3) キーワードと特許分類の掛け算


■特許検索の鉄則023(再掲)

 演算子OR・ANDの正確に使う
 OR :同じ概念のものをつなぐ
 AND:異なる概念のものをつなぐ


■特許検索の鉄則063

 キーワードだけのOR演算や、特許分類だけのOR演算ではヒット件数が
 多くなるためAND演算を併用する


■特許検索の鉄則064

 特許公報に付与されているIPCを使用すると効率よく類似特許を探し出すこ
 とができる。特に登録特許公報に付与されているIPCは審査を経た上で、
 補正等も考慮された上で検討されたIPCなので非常に有効である


■特許検索の鉄則065

 特許検索マトリックスシートで抽出した技術的特徴・構成要件をAND演算
 することで類似特許検索の最も簡単な検索式ができる


■特許検索の鉄則066

 特許検索マトリックスシートで抽出した技術的特徴・構成要件のキーワード
 は調査対象公報の出願人特有のキーワードである可能性もあるため、同義語
 や特許分類を検討する必要がある


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特許電子図書館を使った[特許検索のコツ]

   

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2007-04-22 : 更新