Vol.037(2007-08-13)


■Contents━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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 1:特許検索のネタ

 2:特許検索式パターンの整理
  2-1:特許検索の鉄則の復習
  2-2:検索式作成パターン
  2-3:背景技術・技術的特徴の特許分類選定について

 3:類似特許検索式の例
  3-1:松下電器産業の類似特許検索
  3-2:同一構成を有する特許の検索
  3-3:同一目的・課題を有する特許の検索

 4:特許検索の鉄則



1:特許検索のネタ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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 2月20日のメルマガから連載してきました「類似特許検索(公知例調査)の方法
〜半導体関連特許を例に〜」ですが、今回がシリーズ最終回です。対象にして
きた特許は以下の松下電器産業の特許です。


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【発明の名称】半導体装置
【公開番号】 特開2005-123458
【出願日】  2003年10月17日
【出願人】  松下電器産業株式会社
【要約】
【課題】マイクロ波帯域からテラヘルツ帯域での特性のバラツキが抑制されて
おり、実装が容易で、高周波信号を空間や外部回路に効率よく伝達することが
可能な半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置100は、基板1と、基板1の最上部に形成された
n型半導体層2Aと、基板1上に互いに離間して形成され、伝送線路を構成
する信号線5および接地線6と、n型半導体層2Aと、信号線5および接地
線6とから構成される発振素子15と、基板1上に形成され、信号線5に
接続された高周波利用回路部11とを備えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】n型半導体層を最上部に有する基板と、
 上記基板上に互いに離間して形成され、伝送線路を構成する信号線および
接地線と、
 上記n型半導体層と、上記信号線および上記接地線とから構成される
発振素子と、
 上記基板上に形成され、上記信号線に接続された高周波利用回路部と、
を備える、半導体装置。
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前回はメルマガ購読者の方からのご質問「IPC同士の掛け算」について解説
しました。今回はシリーズ最終回ということで、検索式作成についてまとめを
行います。



2:特許検索式パターンの整理━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2-1:特許検索の鉄則の復習


検索式の基本パターンとして、既に特許検索の鉄則で示しましたが


  ■特許検索の鉄則022

   検索式の基本パターンは以下の3通り
   1) キーワードのみ
   2) 特許分類のみ
   3) キーワードと特許分類の掛け算


  ■特許検索の鉄則077

   検索式の基本パターンは以下の3つの概念の組み合わせである

   (背景技術) × (技術的特徴) × (課題・目的)


の2つがベースとなります。特許検索の鉄則022と077を1つにまとめたのが
以下の表です。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
     |  背景技術  ×  技術的特徴  ×  課題・目的
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
     |  IPC   |  IPC    |
特許分類 |  FI    |  FI     |  Fターム
     |  Fターム  |  Fターム   |
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
     |        |         |
キーワード|  キーワード |  キーワード  |  キーワード
     |        |         |
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


背景技術、技術的特徴、課題・目的で特許分類を使うのか、キーワードを使う
のか、また特許分類の中でもIPCを使うのか、それともFIやFタームを
使うのか、上記の表の中から適切な組み合わせを考えます。


特許分類の課題・目的にはFタームだけが記載してあります。課題・目的には
IPC・FIが使えないのか?と言いますと使えません。

前回のメールマガジンでも掲載しましたが、


 「現行の国際特許分類(IPC)は、単一の技術的観点を中心に展開されて
 おり、技術の区分けも粗いため、IPCのみでは、特に最近の発展した技術
 分野においては数百件から数千件もの先行技術文献を調査しなければなりま
 せん。これに対して、Fタームは、種々の技術的観点(目的、用途、構造、
 材料、製法、処理操作方法、制御手段など)からIPCを所定技術分野毎
 に再区分、あるいは細区分したものであり、Fタームを組み合わせて検索
 することにより、関連先行技術を効率的に絞り込むことができます。」

※特許電子図書館・ヘルプFターム

http://www.ipdl.inpit.go.jp/HELP/pmgs/database/format_summary.html#fterm

であり、IPC(FIも)技術的観点をベースに展開されています。なので、
課題・目的といった観点で展開されている特許分類ではありません。そのため
課題・目的の特許分類としてIPC・FIは適していません。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2-2:検索式作成パターン


先ほどの表に演算子ANDとORを追加してみましょう。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
     |  背景技術  ×  技術的特徴  ×  課題・目的
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
     |  IPC      IPC     
特許分類 |  FI    AND  FI     AND  Fターム
     |  Fターム     Fターム    
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
         OR       OR        OR
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
     |                  
キーワード|  キーワード AND  キーワード  AND  キーワード
     |
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


特許検索の鉄則023でORとAND演算子の使い方についてまとめています。

  ■特許検索の鉄則023

   演算子OR・ANDの正確に使う
   OR :同じ概念のものをつなぐ
   AND:異なる概念のものをつなぐ


キーワード(KW)だけの検索式を作成するとなると、


    背景技術KW and 技術的特徴KW and 課題・目的KW


となります。もしも背景技術や技術的特徴のキーワードを複数利用するので
あれば、キーワード同士をOR演算でつなぎますので、


    (背景技術KW1 or 背景技術KW2 or 背景技術KW3) and 
    (技術的特徴KW1 or 技術的特徴KW2) and 課題・目的KW


のようになります。

特許分類とキーワードを併用するのであれば、


    (背景技術IPC or 背景技術KW1) and
    (技術的特徴FI1 or 技術的特徴FI2 or 技術的特徴KW) and
    (課題・目的FT1 or 課題・目的FT2 or 課題・目的KW)


のようになります。


━━━━━━━━━━━━2-3:背景技術・技術的特徴の特許分類選定について


背景技術・技術的特徴の特許分類について少し考えてみましょう。背景技術と
技術的特徴の関係は

    背景技術  :えんぴつ
    技術的特徴 :芯が赤い

というものです。もしも「芯が赤いえんぴつ」という特許分類があれば、背景
技術と技術的特徴の両方を満たしているので、わざわざ


    背景技術の特許分類 × 技術的特徴の特許分類


という演算をする必要がありません。背景技術も含んだ技術的特徴の特許分類
があれば、その特許分類だけを使えば大丈夫です。


3:類似特許検索式の例━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━3-1:松下電器産業の類似特許検索


それでは本シリーズ最後に例に取り上げた松下電器産業の特許に関連する特許
検索を行っていきましょう。例として取り上げるのは

 ・同一構成を有する特許の検索
 ・同一目的・課題を有する特許の検索

の2つです。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━3-2:同一構成を有する特許の検索


ずいぶん前に作成した特許検索マトリックスシートを見ます。


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
         |  キーワード
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 背景技術   1|  半導体装置
         |━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
        2|  周波数帯域
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 課題・目的  1|  高周波帯域での特性バラツキ抑制
         |━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
        2|  実装の容易性
         |━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
        3|  高周波信号を空間・外部回路へ効率よく伝達
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 技術的特徴  1|  基板(n型半導体層)
 構成要件    |━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
        2|  信号線・接地線
         |━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
        3|  発振素子
         |━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
        4|  高周波利用回路部
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


構成としては「技術的特徴・構成要件」のところにある4つの構成を備えて
いれば良いことになります。よって、


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
     |  背景技術  ×  技術的特徴  ×  課題・目的
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
IPC  |  H01L 47/02
     |  H03B  9/12
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
キーワード|            基板
     |           信号線・接地線
     |           発振素子
     |           高周波利用回路部
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

※本当はキーワードについて同義語などを検討しなければいけませんが、今回
 は省略します。検索式の立て方について、その考え方をマスターして下さい


となります。背景技術である特許分類IPC同士はOR演算子でつなぎます。
技術的特徴のキーワード同士はAND演算子でつなぎます。


特許電子図書館IPDLの公報テキスト検索で検索してみましょう。

http://www7.ipdl.inpit.go.jp/Tokujitu/tjktz.ipdl

●公報種別
 公開特許公報 (公開、公表、再公表)  

検索項目選択       検索キーワード       検索方式
 IPC         H01L47/02 H03B9/12     OR
                AND
 要約+請求の範囲    基板            OR
                AND
 要約+請求の範囲    信号 接地          OR
                AND
 要約+請求の範囲    発振            OR
                AND
 要約+請求の範囲    高周波           OR


 ※信号線・接地線からは「線」を、発振素子からは「素子」を、高周波利用
  回路部からは「利用回路部」をそれぞれ削除しました。



上記の検索式で検索すると、以下の7件の特許がヒットします。


No 公報番号    発明の名称
----------------------------------------------------------------------
1. 特開2006-253263 ガンダイオード発振器
2. 特開2005-142476 半導体装置およびその製造方法
3. 特開2005-123458 半導体装置
4. 特開2005-123385 半導体装置
5. 特開2003-347849 高周波装置およびその製造方法ならびにミリ波送受信器
6. 特開2003-133858 高次モードの平面共振器を用いた多素子発振器
7. 特開平11-031918 マイクロ波ミリ波放射型発振装置
----------------------------------------------------------------------


今回の対象特許である「特開2005-123458」も3番目にヒットしています。
あとは他の特許の内容を読んで検討します。


━━━━━━━━━━━━━━━━━3-3:同一目的・課題を有する特許の検索


次に同一の目的・課題を有する特許を検索してみましょう。


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
         |  キーワード
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 背景技術   1|  半導体装置
         |━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
        2|  周波数帯域
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 課題・目的  1|  高周波帯域での特性バラツキ抑制
         |━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
        2|  実装の容易性
         |━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
        3|  高周波信号を空間・外部回路へ効率よく伝達
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 技術的特徴  1|  基板(n型半導体層)
 構成要件    |━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
        2|  信号線・接地線
         |━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
        3|  発振素子
         |━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
        4|  高周波利用回路部
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


前提条件として、「同一の構成を有していなくとも良い」とします。つまり
同一の背景技術(今回の場合はガン効果装置)であって、同一の課題・目的を
有している特許を探す、という場合を想定します。

今回は特許検索マトリックスシートの中に書かれている課題・目的の中から
「高周波帯域での特性バラツキ抑制」を取り上げます。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
     |  背景技術  ×  技術的特徴  ×  課題・目的
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
IPC  |  H01L 47/02
     |  H03B  9/12
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
キーワード|                     高周波帯域
     |                     バラツキ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


同様に、特許電子図書館IPDLの公報テキスト検索で検索してみましょう。

http://www7.ipdl.inpit.go.jp/Tokujitu/tjktz.ipdl

●公報種別
 公開特許公報 (公開、公表、再公表)  

検索項目選択       検索キーワード       検索方式
 IPC         H01L47/02 H03B9/12     OR
                AND
 要約+請求の範囲    高周波            OR
                AND
 要約+請求の範囲    バラツキ ばらつき      OR


 ※高周波帯域からは「帯域」を削除しました。またバラツキはひらがなで
  記載される場合もあるため「ばらつき」を追加しました


すると、以下の4件の特許がヒットしました。


No 公報番号    発明の名称
----------------------------------------------------------------------
1. 特開2006-253263 ガンダイオード発振器
2. 特開2005-142476 半導体装置およびその製造方法
3. 特開2005-123458 半導体装置
4. 特開2005-123385 半導体装置
----------------------------------------------------------------------


今回の対象特許である「特開2005-123458」も3番目にヒットしています。
他の特許の要約部分を見てみると、


■1. 特開2006-253263 ガンダイオード発振器
【課題】高周波領域でも発振周波数のばらつきのないガンダイオード
    発振器を提供する。 

■2. 特開2005-142476 半導体装置およびその製造方法
【課題】マイクロ波帯域からテラヘルツ帯域での特性のバラツキが抑制されて
    おり、実装が容易で、高周波信号を空間や外部回路に効率よく伝達す
    ることが可能な半導体装置を提供する。

■4. 特開2005-123385 半導体装置
【課題】マイクロ波帯域からテラヘルツ帯域での特性のバラツキが抑制されて
    おり、実装が容易で、高周波信号を空間や外部回路に効率よく伝達す
    ることが可能な半導体装置を提供する。


No.2とNo.4は対象特許とソックリな【課題】ですが、同じ松下電器産業の出願
でした。ちなみにNo.1は新日本無線の出願です。


気づいた方もいるかもしれませんが、No.1の特開2006-253263は「3-2:同一
構成を有する特許の検索」でもヒットした特許です。同一構成を有していて、
かつ同一の課題・目的を有しているということで、この特許は松下電器産業の
特許に非常に類似しているのではないかと考えられます。


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以上、10回にわたりお送りしてきました類似特許検索について終了します。
今回のシリーズはメルマガ購読者の中村さんからリクエストをいただいた
テーマでした。中村さん、ありがとうございました。

また購読者の方で取り上げて欲しいテーマなどありましたらメルマガ末尾の
発行人メールアドレスまでご連絡下さい。

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4:特許検索の鉄則━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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本号では新たな特許検索の鉄則はありません。これまでの特許検索の鉄則の中
から3つを再掲します。


■特許検索の鉄則022 (再掲)

 検索式の基本パターンは以下の3通り
 1) キーワードのみ
 2) 特許分類のみ
 3) キーワードと特許分類の掛け算


■特許検索の鉄則023 (再掲)

 演算子OR・ANDの正確に使う
 OR :同じ概念のものをつなぐ
 AND:異なる概念のものをつなぐ


■特許検索の鉄則077 (再掲)

 検索式の基本パターンは以下の3つの概念の組み合わせである

 (背景技術) × (技術的特徴) × (課題・目的)


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特許電子図書館を使った[特許検索のコツ]

   

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2007-09-23 : 更新