Vol.75(2009-03-23)




■Contents━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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 1:特許検索のネタ

 2:予備検索から検索式作成へ(2)
  2-1: 予備検索・抽出したキーワード・特許分類の確認(2)
  2-2: 特許分類のモレのチェック
  2-3: 予備検索式のパターンとIPDL検索メニューの選択(2)
  2-4: 特許分類とキーワードの掛け算(1)

 3:特許検索の鉄則

 ◇ショートカット



1:特許検索のネタ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


Vol.60から新シリーズ 特許電子図書館IPDLを使った「特許検索再入門」 を始
めました。新たに知財部門や知財担当として配属された方々には、このシリー
ズでイチから特許検索のコツ・テクニックを学んでいただければと思います。


Vol.63からトヨタ自動車が発表した太陽光発電を搭載したハイブリッド車「プ
リウス」を例題として設定しています。


ハイブリッド車「プリウス」、太陽光発電を搭載 トヨタ
出所:NIKKEI NET 日経Ecolomy

http://eco.nikkei.co.jp/news/nikkei/article.aspx?id=AS1D0600F%2006072008

今回の状況設定として、あなたはABC自動車の知的財産部員とします。
技術者の方から、以下のように頼まれました。


  ハイブリッド自動車の屋根にカーエアコン駆動用電源として
  太陽光発電を利用するシステムを発明をした。
  自分でキーワード検索で特許調査を行ったが、
  他の自動車メーカーからは類似の特許出願はされていないので、
  是非とも日本・米国・欧州へ特許出願を行いたい。


前回は実際の検索式作成に向けて、予備検索を行いましたね。今回は特許分類
のモレのチェックを行って、さらに予備検索について検討を加えていきます。



2: ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 予備検索から検索式作成へ(2)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


━━━━━━━━━2-1: 予備検索・抽出したキーワード・特許分類の確認(2)


前回のメルマガ「予備検索・抽出したキーワード・特許分類の確認(1)」では
キーワード(キーワード対象範囲は公報全文)だけの検索で


----------------------------------------------------------------------
No. 公報番号    発明の名称
----------------------------------------------------------------------
× 3.  特開2009-040233 車両空調システム、車両および車両空調装置  
×13.  特開2008-018797 車両用空調制御装置  
△16.  特開2007-307957 車両用空調制御装置  
×27.  特開2007-076544 車両用空調装置  
△32.  特開2006-315461 車両用空調装置  
△44.  特開2004-106608 自動車用エアコン、自動車用冷蔵庫、これを装備し
            た自動車、および、自動車エアコン用の部材  
△46.  特開2003-320843 車両の空調装置  
△49.  特開2002-240532 車両用空調装置  
△55.  特開平11-342731 車両用空調装置  
----------------------------------------------------------------------

※記号について
 ○が3つの要素(ハイブリッド・エアコン・太陽電池)を満たしている特許
 △が3つのうち2つの要素を満たしている特許
 ×はいずれか1つしか開示されていない特許


のようなリストまで行きました。前回の特許検索の鉄則に


 ■特許検索の鉄則162
  特許検索式を本格的に作成する前に、予備検索を行う。予備検索を行う
  理由は以下の3つである。
   1) 選択したキーワード・特許分類で調査対象技術がヒットするか?
   2) 見落としているキーワード・特許分類がないか?
   3) ズバリの該当特許を探す


がありましたね。覚えていますか?


もしキーワードだけの検索式で○(ズバリの該当特許)がヒットしたのであれば
選択してきた特許分類やキーワードが(ある程度)の妥当性を有していると考え
ることができます。しかし○(ズバリの該当特許)がヒットしていない場合は、
キーワードか特許分類の選択が十分でない可能性があります。


今回○(ズバリの該当特許)はありませんが、△について内容(特に特許分類)を
確認してみましょう。


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慣れてもコワイ特許検索式の作成
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キーワード・特許分類の選定作業と特許検索式の作成は、


       調査条件の確認・調査対象技術の明確化
               ↓
          キーワード・分類選定
               ↓
             予備検索
               ↓
          キーワード・分類選定
               ↓
             予備検索
               ↓
          キーワード・分類選定
               ↓
             予備検索
               ↓
             検索式作成


のように1回だけでスンナリと終わるケースは(私の経験上)あまりないと思い
ます。「キーワード・分類選定」と「予備検索」を何回かを繰り返していくこ
とで特許検索式の精度向上(ヒットさせたい特許がしっかりと入りつつ、検索
対象母集団の件数を少なくする)が図れます。

なお、特定技術分野の特許調査を長年経験してくるとキーワードも特許分類も
だいたい頭に入ってきます。この状態になるとゼロベースでキーワード・特許
分類選定を行う必要がなくなりますので、効率的に特許検索式を作成すること
ができます。

ただし、慣れてくるとどうしても「自分はこの分野を理解しているんだ」と過
信してしまいます。研究開発・技術開発は日進月歩です。よって研究開発・技
術開発の成果である特許出願内容も日進月歩です。新たな技術用語が登場した
り、これまで付与されていなかったような特許分類の要素も加味されることな
どがありえますので、過去の経験を生かしつつも毎回緊張感を持って検索式の
作成に取り組むべきだと思います。

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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2-2:特許分類のモレのチェック


先ほどのリストで関連度△の特許について特許分類FIを抽出してみました。


----------------------------------------------------------------------
No. 公報番号    発明の名称
----------------------------------------------------------------------
△16.  特開2007-307957 車両用空調制御装置  
       FI
       B60H  1/00    101 Z
       B60H  1/24    611
       B60H  1/24    661 Z

△32.  特開2006-315461 車両用空調装置  
       FI
       B60H  1/00    101 X
       B60H  1/00    101 Z
       B60H  1/22    671

△44.  特開2004-106608 自動車用エアコン、自動車用冷蔵庫、これを装備し
            た自動車、および、自動車エアコン用の部材  
       FI
       B60H  1/32    622 A
       B60H  1/32    612
       B60R 16/04        U
       F25B 27/00        M

△46.  特開2003-320843 車両の空調装置  
       FI
       B60H  1/32    621 G
             1/24    611

△49.  特開2002-240532 車両用空調装置  
       FI
       B60H  1/00    101 Z
                     101 Q
             1/22    671
       B60R 16/04        U
       H01L 31/04        Q

△55.  特開平11-342731 車両用空調装置  
       FI
       B60H  1/32    621 G
             1/22

----------------------------------------------------------------------


タイトルベースで「空調」「エアコン」などを含んでいる特許を抽出したので
付与されている特許分類は


  B60H   特に車両の客室または貨物室の暖房,冷房,換気,または他の
       空気処理手段に関する装置または改造装置


が主です。その他付与されている特許分類を見ていくと、選定した特許分類に
は含まれていない特許分類があることに気づきます。


     B60R 16/04        U
     F25B 27/00        M


の2つです。それぞれパテントマップガイダンスで定義を確認してみます。


----------------------------------------------------------------------
FI      説明
----------------------------------------------------------------------
 B60R16/00   電気回路,流体回路,またはそれらの要素の配置で,特に
        車両に適用,他に分類されないもの
 B60R16/04   ・・バッテリーからなるもの
*B60R16/04U    車両用太陽電池に関するもの
 B60R16/04V    ・太陽電池を充電用電源として用いるもの

 F25B27/00   特殊なエネルギ源を用いる機械,プラントまたはシステム
*F25B27/00M  ・太陽エネルギにより圧縮機を駆動するもの,例.ランキ
         ンサイクルを用いて太陽エネルギにより駆動するもの;
         太陽電池によるもの
----------------------------------------------------------------------


* がついているFIが選定した特許分類には含まれていない特許分類です。実は
これらの特許分類は前に行った選定ではモレていた特許分類です。


◆B60R16/04U
 このFIはハイブリッド車・電気自動車・燃料電池車のようなバッテリを搭載
 した車の電気回路・流体回路などに付与されるB60R16の下位分類です。
 B60R16/04Uとその下位のB60R16/04Vは、バッテリを搭載して、かつ「太陽電
 池」を搭載した自動車の分類になります。

 よって

 a) ハイブリッド車
 b) エアコン
 c) 太陽光発電

 の要素でいうと、a)とc)をカバーする分類になります。


◆F25B27/00M
 このFIは圧縮機駆動のエネルギー源として太陽エネルギーを利用するという
 特許分類です。エアコンには圧縮機(コンプレッサ)が必要です。よって、
 このF25B27/00MというFIは

 a) ハイブリッド車
 b) エアコン
 c) 太陽光発電

 c)太陽光発電でb)のエアコンを駆動するという意味の特許分類になります。


このように予備検索を行うことで、特許分類(やキーワード)を細くしていくこ
とが重要です。特に特許分類の場合は、上記のような複数の技術分野にまたが
った特許分類はなかなか始めから探せるものではありません。該当特許やそれ
に近い特許を実際に探してみて、その特許に付与されている特許分類を確認す
ることで発見できるものもあります。


━━━━━━━━━2-3: 予備検索式のパターンとIPDL検索メニューの選択(2)


さて前回も登場した特許検索の鉄則。


  ■特許検索の鉄則 022

   検索式の基本パターンは以下の3通り
    1) キーワードのみ
    2) 特許分類のみ
    3) キーワードと特許分類の掛け算


今回の場合は、調査対象技術を構成する要素が


 a) ハイブリッド車
 b) エアコン
 c) 太陽光発電


の3つから構成されているので、予備検索式を作成する場合


    a)キーワード and  b)キーワード and c)キーワード
    a)キーワード and  b)キーワード and c)特許分類
    a)キーワード and  b)特許分類  and c)キーワード
    a)キーワード and  b)特許分類  and c)特許分類
    a)特許分類  and  b)キーワード and c)特許分類
    a)特許分類  and  b)特許分類  and c)特許分類


の6パターンができることは前回のメルマガで述べたとおりです。1つ目のパ
ターンについてはこれまで検討してきました。


その他のパターンは特許分類とキーワードの掛け算がありますので、特許電子
図書館の検索メニューも特許分類(今回はFI)とキーワードの掛け算ができなけ
ればいけません。


 ■特許検索の鉄則 046

 特許電子図書館の特許・実用新案検索の下記3メニューの検索可能な項目を
 理解する

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
          | 特許分類 |    キーワード
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 公報テキスト検索 | IPC  |発明の名称・要約・特許請求の範囲
          | FI   |・全文・出願人・発明者など
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 公開特許公報   | IPC  |発明の名称・要約・出願人
 フロントページ検索|      |
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 特許分類検索   | IPC  |
          | FI   |     使用不可
          | Fターム |
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


前回と同様、公報テキスト検索を選択します。


さて、一番最後の特許分類だけの掛け算というパターンを


 ■公開特許公報 (公開、公表、再公表)

 FI:B60L?
     AND
 FI:B60H?
     AND
 FI:H01L31/04?


で検索してみましょう。

するとヒット件数は0件になってしまいます(2009年3月15日現在)。


それでは、最後の「c) 太陽光発電」のところだけをキーワードに置き換えて
みましょう。


 ■公開特許公報 (公開、公表、再公表)

 FI:      B60L?
           AND
 FI:      B60H?
           AND
 要約+請求の範囲:太陽光発電 太陽発電 ソーラー発電 太陽電池


すると今度は5件ヒットします(2009年3月15日現在)。

----------------------------------------------------------------------
No. 公報番号    発明の名称
----------------------------------------------------------------------
1.  特開2003-189410 車両  
2.  特開2001-169411 車両用モータの電源装置。  
3.  特開2001-169410 車両用モータの電源装置。  
4.  特開2001-163040 車両用モータの電源装置。  
5.  特開平11-122708 車両用冷却装置  
----------------------------------------------------------------------
※キーワード検索対象範囲を公報全文にすると10件ヒットします。


つづいて「b) エアコン」の部分をキーワードに置き換えて「c) 太陽光発電」
をFIに戻して検索してみましょう。


 ■公開特許公報 (公開、公表、再公表)

 FI:      B60L?
           AND
 要約+請求の範囲:エアコン 空調 空気調和
           AND
 FI:      H01L31/04?


するとヒット件数は0件になってしまいます(2009年3月15日現在)。

※キーワード検索対象範囲を公報全文にすると9件ヒットします。


最後に「a) ハイブリッド車」をキーワードにしてみましょう。


 ■公開特許公報 (公開、公表、再公表)

 要約+請求の範囲:ハイブリッド車 OR ハイブリッドカー OR ハイブリッド
          電気自動車
           AND
 FI:      B60H?
           AND
 FI:      H01L31/04?


これもヒット件数は0件になってしまいます(2009年3月15日現在)。

※キーワード検索対象範囲を公報全文にすると1件ヒットします。


次に、特許分類とキーワードの掛け算について検討していきましょう。



━━━━━━━━━━━━━━━━━2-4: 特許分類とキーワードの掛け算(1)


実は特許分類同士の掛け算、今回でいえば


    a)特許分類  and  b)特許分類  and c)特許分類


は該当特許がヒットする確率は高くなりますが、逆にヒットする特許は少なく
なります。実際、今回のケースではヒットは0件でした。


特許分類同士の掛け算に関する鉄則として、



 ■特許検索の鉄則 075

  特許分類同士の掛け算で検索式を作成する場合は、

       背景技術に関する特許分類 × 技術的特徴の特許分類

  の掛け算にすると良い



というのがありました。実はこの鉄則は背景技術と技術的特徴の2つに分かれ
ていると非常に簡単に適用できます。つまり、今回の


 a) ハイブリッド車
 b) エアコン
 c) 太陽光発電


から「c) 太陽光発電」を除外してみましょう。すると「ハイブリッド車用の
エアコン」に関する特許を探せば良いことになります。その場合、



       背景技術に関する特許分類 × 技術的特徴の特許分類

     = ハイブリッド車・特許分類 × エアコン・特許分類

     = B60L? (ほか省略)     × B60H?


とすれば「ハイブリッド車用のエアコン」に関する特許がヒットします。


今回のケースではハイブリッド車、エアコン、太陽光発電の3つの技術が関連
していますので、特許検索の鉄則をそのまま適用するわけにはいきません。


次回は特許分類とキーワードの掛け算の続きにを詳しく見ていきましょう。



3:特許検索の鉄則━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

以前の特許検索の鉄則4つを再掲します。


■特許検索の鉄則022 (再掲)
 検索式の基本パターンは以下の3通り
  1) キーワードのみ
  2) 特許分類のみ
  3) キーワードと特許分類の掛け算


■特許検索の鉄則046 (再掲)
 特許電子図書館の特許・実用新案検索の下記3メニューの検索可能な項目を
 理解する

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
          | 特許分類 |    キーワード
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 公報テキスト検索 | IPC  |発明の名称・要約・特許請求の範囲
          | FI   |・全文・出願人・発明者など
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 公開特許公報   | IPC  |発明の名称・要約
 フロントページ検索|      |(出願人)
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 特許分類検索   | IPC  |
          | FI   |     使用不可
          | Fターム |
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


■特許検索の鉄則075 (再掲)
 特許分類同士の掛け算で検索式を作成する場合は、

      背景技術に関する特許分類 × 技術的特徴の特許分類

 の掛け算にすると良い


■特許検索の鉄則162 (再掲)
 特許検索式を本格的に作成する前に、予備検索を行う。予備検索を行う理由
 は以下の3つである。
  1) 選択したキーワード・特許分類で調査対象技術がヒットするか?
  2) 見落としているキーワード・特許分類がないか?
  3) ズバリの該当特許を探す



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ショートカット
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・公報テキスト検索

http://www7.ipdl.inpit.go.jp/Tokujitu/tjktz.ipdl

・パテントマップガイダンス

http://www5.ipdl.inpit.go.jp/pmgs1/pmgs1/pmgs

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2009-05-11 : 更新