Vol.77(2009-05-11)




■Contents━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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 1:特許検索のネタ

 2:本検索と検索結果の評価
  2-1: 検索式作成
  2-2: ヒットした特許文献の評価

 3:特許検索の鉄則

 ◇ショートカット


1:特許検索のネタ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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Vol.60から新シリーズ 特許電子図書館IPDLを使った「特許検索再入門」 を始
めました。新たに知財部門や知財担当として配属された方々には、このシリー
ズでイチから特許検索のコツ・テクニックを学んでいただければと思います。


Vol.63からトヨタ自動車が発表した太陽光発電を搭載したハイブリッド車「プ
リウス」を例題として設定しています。


ハイブリッド車「プリウス」、太陽光発電を搭載 トヨタ
出所:NIKKEI NET 日経Ecolomy

http://eco.nikkei.co.jp/news/nikkei/article.aspx?id=AS1D0600F%2006072008

今回の状況設定として、あなたはABC自動車の知的財産部員とします。
技術者の方から、以下のように頼まれました。


  ハイブリッド自動車の屋根にカーエアコン駆動用電源として
  太陽光発電を利用するシステムを発明をした。
  自分でキーワード検索で特許調査を行ったが、
  他の自動車メーカーからは類似の特許出願はされていないので、
  是非とも日本・米国・欧州へ特許出願を行いたい。


今回は本シリーズ最終回です。前回までで予備検索および検索式作成のアウト
ラインについて見てきました。今回は実際にキーワード・特許分類を検索式の
形で表現して検索し、ヒットした特許文献について評価していきましょう。



2:━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━本検索と検索結果の評価
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2-1:検索式作成


前回から1ヶ月近く空いてしまいましたので、内容を忘れている方がいるかも
しれませんね。申し訳ありませんが、ちょっと忘れてしまった・・という方は
下記URLから前回分を復習してください。

http://www.e-patentsearch.net/mailmagazine/backnumber/mailmagazine076.html

前回得られた結論は


     背景技術「ハイブリッド車」に関する特許分類

            and

     技術的特徴「エアコン(補機)」のキーワード

            and

     技術的特徴「太陽光発電」キーワード


で検索式を作成するということでした。Vol.74で特許分類・キーワードを
整理しましたね。もう一度再掲します。


◆「ハイブリッド車」に関する特許分類

----------------------------------------------------------------------
FI      説明
----------------------------------------------------------------------
B60K6/20   相互または共通推進のための電気モータおよび内燃機関からな
       る原動力の配置または取り付け
B60K9/00C   電動モータとエンジンのハイブリッド車
B60K9/00E   配置または取付け以外にも特徴を有するもの
B60K17/04   ハイブリッド車両の動力伝達装置の配置又は取付け
B60K41/    ハイブリッド車両の複合制御
B60L     ハイブリッド車両の電動機制御
B60L1/    ハイブリッド車
B60L7/20   機関により駆動される発電機をもつ車両の原動機に回生力を
       加えて制動するもの
B60L11/    ハイブリッド車
B60W20/00   ハイブリッド車両に特に適した制御方式
       ※FIにはB60Wはなし。IPCですが参考として掲載
F02D29/    ハイブリッド車両のエンジン制御
F02D29/02D  駆動源として電動機も備えた車両用
F02D29/06D  車両駆動モ−タ用発電機
F02N11/04D  ハイブリッド車用
H02K7/    エンジン系とモーター系との結合装置
----------------------------------------------------------------------
※上記分類を全て利用すると多いので、B60K6/?、B60K17/04、B60K41/?、B60L
 の4つを利用します。


◆「エアコン(補機)」のキーワード

----------------------------------------------------------------------
キーワード
----------------------------------------------------------------------
エアコン
空調
空気調和
補機
----------------------------------------------------------------------


◆「太陽光発電」キーワード

----------------------------------------------------------------------
キーワード
----------------------------------------------------------------------
太陽光発電
太陽発電
ソーラー発電
太陽電池
----------------------------------------------------------------------


以上の材料(特許分類・キーワード)を基に検索式を組み立てると、以下のよう
になります。


  FI=(B60K6/? OR B60K17/04 OR B60K41/? OR B60L?)
  AND KW=(エアコン OR 空調 OR 空気調和 OR 補機)
  AND KW=(太陽光発電 OR 太陽発電 OR ソーラー発電 OR 太陽電池)

  *KW:キーワード


それでは特許電子図書館・公報テキスト検索を使って検索してみましょう。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2-2:ヒットした特許文献の評価


特許電子図書館・公報テキスト検索

http://www7.ipdl.inpit.go.jp/Tokujitu/tjkta.ipdl?N0000=108

を開いて以下の検索をします。


 ●公報種別
  公開特許公報 (公開、公表、再公表)
  公開実用新案公報 (公開、公表、登録実用)

 FI       :B60K6/? B60K17/04 B60K41/? B60L?        (OR)
 要約+請求の範囲:エアコン 空調 空気調和 補機        (OR)
 要約+請求の範囲:太陽光発電 太陽発電 ソーラー発電 太陽電池 (OR)


※今回の調査目的は技術者が提案した発明に関する先行技術調査なので、登録
 特許・実用新案は含めなくても良いでしょう。


すると以下の9件がヒットしました。

----------------------------------------------------------------------
No 公報番号    発明の名称
----------------------------------------------------------------------
 1. 特開2008-061311 太陽光発電装置の発電状態異常判定装置および太陽光
          発電装置の発電状態異常判定方法
 2. 特開2007-228753 電動車両
 3. 特開2007-209168 電動車両
 4. 特開平11-299003 絶縁形直流−直流電力変換装置及び電気自動車用電気
          システム
 5. 特開平11-275766 絶縁形直流−直流電力変換装置及び電気自動車用電気
          システム
 6. 特開平11-273982 キャパシタ冷却装置
 7. 特開平09-140008 地上制御車両の制御装置
 8. 特開平06-086402 車両用太陽電池式補機駆動装置
 9. 特開平05-260606 電気自動車
----------------------------------------------------------------------

さて、この9件について評価していかなければいけません。


技術者から聞いている発明のポイントは「ハイブリッド自動車の屋根にカーエ
アコン駆動用電源として太陽光発電を利用するシステム」です。そして、Vol.
65で以下のマトリックスでまとめています。


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
        |HEV |HEV   |HEV以外|HEV以外 |
        |エアコン|エアコン以外|エアコン |エアコン以外|
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 太陽光発電  | A1 |  A1’ | −   |  −   |
 (屋根設置)  |    |      |     |      |
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 太陽光発電  | B1 |  B1’ | −   |  −   |
 (屋根以外設置)|    |      |     |      |
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 太陽光発電以外| −  |  −   | −   |  −   |
 (屋根設置)  |    |      |     |      |
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 太陽光発電以外| −  |  −   | −   |  −   |
 (屋根以外設置)|    |      |     |      |
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
                        ※メルマガVol.65より


ヒットした特許の【要約】と【特許請求の範囲】を読んで以下のような関連度
を付与していきます。


 関連度○:A1・B1  (発明のポイントに非常に近い)
 関連度△:A1'・B1' (発明のポイントに非常に近いが、エアコンと明示して
           いない)
 関連度×:−    (今回の発明のポイントと関連しない)


特許分類とキーワードを検討していますがノイズ特許、関連度×の特許は含ま
れてしまいます。公報を読んでノイズ特許は除去しなければいけません。

9件に対して関連度を付与していくと・・・


----------------------------------------------------------------------
No 公報番号    関連度 コメント
----------------------------------------------------------------------
 1. 特開2008-061311 △   請求項7
 2. 特開2007-228753 △   請求項6,8
 3. 特開2007-209168 △   請求項8
 4. 特開平11-299003 △   開示内容の主はDC-DCコンバータ
 5. 特開平11-275766 △   開示内容の主はDC-DCコンバータ
 6. 特開平11-273982 ○   屋根面にファン駆動用電源として設置
 7. 特開平09-140008 ×   自動車ではなく鉄道(地上側の変電所から・・)
 8. 特開平06-086402 ○   EV・HEVと明記していないが開示内容は○
 9. 特開平05-260606 ×   太陽電池の用途が不明
----------------------------------------------------------------------

のようになりました。ノイズは2件ありました。1件は太陽電池で発電した電力
用途が要約・請求項では分からない特開平05-260606と、もう1件は自動車では
なく明らかに鉄道であると判断した特開平09-140008です。

太陽電池で発電した電力をエアコン用電源として用いると書いてあるのは
以下の2件です。


◆特開平11-273982(日産ディーゼル工業株式会社)
(57)【要約】
【課題】車両走行用の電動機4,5と、その電源用途にキャパシタ6を備える
車両において、多数のキャパシタ6の格納場所として直射日光で温度が上昇し
やすい屋根部を有効に利用できるようにする。
【解決手段】車室の屋根裏に所定容積の格納室13を画成し、この室13に多
数のキャパシタ6を格納する。外気の取入口15を形成する入口部16と、そ
の外気を強制的に格納室13へ導入するためのファン18と、格納室13の空
気を外部へ排出するための出口部19を設ける。屋根面にファン18の電源と
して太陽電池24を取り付ける。キャパシタ6の雰囲気温度を所定値以下に保
つようファン18の駆動を制御する手段22を設ける。


◆特開平06-086402(三菱自動車工業株式会社)
【要約】
【目的】本発明は、車両において太陽電池を装備し、太陽エネルギを利用して
車内の昇温防止等の機能を達成すべく構成された、車両用太陽電池式補機駆動
装置に関し、通常仕様のファン等を使用しながら、長期にわたる安定した動作
を行なえるようにすることを目的とする。
【構成】車体表面に装備された太陽電池1と、この太陽電池1により駆動され
るべき補機9と、上記太陽電池1に接続されてその出力を充電するバッテリー
8とをそなえ、上記補機9がスイッチ10を介し上記バッテリー8の出力側に
接続されるとともに、上記スイッチ10を所定の状態で所定時間閉成させるコ
ントローラ7を設けるように構成する。



特開平11-273982(日産ディーゼル工業株式会社)の主な開示内容はキャパシタ
ですが、【解決手段】に”屋根面にファン18の電源として太陽電池24を取
り付ける”とバッチリ書いてあります。

同様に三菱自動車工業株式会社の特開平06-086402も、太陽電池を屋根に設置
するとは書いていませんが、【特許請求の範囲】には”車体表面に装備された
太陽電池”と書いてありますので、当然屋根も含まれます。


このように検索式でヒットした特許文献の関連度付け・内容の評価を行って、
特許出願すべきか否か、もしも特許出願するのであれば【特許請求の範囲】の
技術的範囲をどれぐらいに設定するか、などなど検討していきます。


理工系の大学・大学院を卒業・終了された方であれば卒業論文・修士論文を書
いた際に、緒言で自分の研究内容の意義や先行研究との差異について言及した
と思います。それなのに企業・研究機関での研究開発・特許出願となると先行
技術調査を行わないのは非常に不思議かつ残念なことです。

自分の研究が過去の研究と比べ、どのような点が新規で進歩があるのか、それ
を踏まえつつ研究開発・特許出願を行う必要があると考えます。



さて、昨年5月26日から続いてきましたシリーズ


    特許電子図書館IPDLを使った「特許検索再入門」


ですが今回で終了です。説明がくどくなってしまい、予定していたよりも大幅
に回数が増えてしまいました・・・



次回からは「特許検索競技大会」対策講座がスタートします。まずが「特許検
索競技大会」ではどういう問題が出題されるのか?といったところから始めて
いきたいと思います。



3:特許検索の鉄則━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

以前の特許検索の鉄則2つを再掲します。


■特許検索の鉄則075 (再掲)
 特許分類同士の掛け算で検索式を作成する場合は、

      背景技術に関する特許分類 × 技術的特徴の特許分類

 の掛け算にすると良い


■特許検索の鉄則075' (再掲)
 キーワードと特許分類の掛け算で検索式を作成する場合は、

      背景技術に関する特許分類/キーワード
          and
      技術的特徴(1)の特許分類/キーワード
          and
      技術的特徴(2)の特許分類/キーワード
          and
      技術的特徴(3)の特許分類/キーワード

 の掛け算にすると良い


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2009-05-11 : 更新