e-patent > メールマガジン > 2009年特許検索競技大会対策講座 > (3) 投網戦法と一本釣り戦法

Vol.80(2009-06-02)




■Contents━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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 1:特許検索のネタ

 2:投網戦法と一本釣り戦法
  2-1: 投網戦法と一本釣り戦法の概念
  2-2: 投網戦法と一本釣り戦法の例



1:特許検索のネタ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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Vol.078からスタートした「特許検索競技大会対策講座」。

前回は時間配分と検索方針について考えました。今回は前回メルマガの最後に
ちょっと説明した「投網戦法」と「一本釣り戦法」の違いについて見ていきた
いと思います。



2:━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━投網戦法と一本釣り戦法
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2-1:投網戦法と一本釣り戦法の概念


前回メルマガで紹介したとおり、2つの検索方針を魚の捕獲方法でたとえると


  投網戦法
   「魚がいそうだ!」と思った場所に網を投げ魚を捕らえる方法
   この方法では必然的に魚がいると予想される場所の周囲も含めて補足

  一本釣り戦法
   カツオの一本釣りをイメージ
   銛(もり)を使い魚を串刺しにして捕らえる


となります。どなたでも推測できる通り、一本釣りの方が難しそうです。
一本釣り(特に銛を使って魚を串刺し)の場合は、


  魚の場所を的確に捉える = 調査対象技術を的確に捉える

  銛を正確に突き刺す   = 適切な特許分類・キーワードを組合わせる


の2つが非常に重要になります。もちろん、この2つは投網戦法でも重要ですが
一本釣り戦法を使う場合は両者がしっかりしていないと、まったく魚は捕まり
ません(つまり特許がヒットしません)。


もう1つ概念的な図で両者の違いを示したいと思います。


たびたび魚の捕獲の例で恐縮ですが、釣堀に魚がいると仮定します。


          ━━━━━━━━━━━━
          ┃          ┃
          ┃  魚       ┃
          ┃        魚 ┃
          ┃     魚    ┃
          ┃          ┃
          ┃   魚      ┃
          ┃          ┃
          ━━━━━━━━━━━━


投網戦法の場合は以下のように魚(=特許)を捕獲します。


          ━━━━━━━━━━━━
          ┃  ---------------- ┃
          ┃  |魚      | ┃
          ┃  |      魚| ┃
          ┃  |    魚  | ┃
          ┃  |       | ┃
          ┃  |  魚    | ┃
          ┃  ---------------- ┃
          ━━━━━━━━━━━━


網を投げる場所は魚のいるところですが、当然のことながら魚がいないところ
も網の範囲に入ります。特許検索で言えばノイズ公報です。


これに対して一本釣り戦法は(=⇒は銛をイメージ)以下のようになります。


          ━━━━━━━━━━━━
          ┃          ┃
          ┃=⇒魚   =⇒  ┃
          ┃        魚 ┃
          ┃   =⇒魚    ┃
          ┃          ┃
          ┃   魚      ┃
          ┃ =⇒       ┃
          ━━━━━━━━━━━━


わざと2つほど魚を外している銛がありますが、このように魚をピンポイント
に串刺しにするのが一本釣り戦法の例です。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2-2:投網戦法と一本釣り戦法の例


投網戦法と一本釣り戦法の概念については理解していただいたと思いますので
特許庁の検索報告書を例に投網戦法と一本釣り戦法の違いについて見ていきま
しょう。


例として取り上げるのはユニ・チャームのマスク特許です。


【発明の名称】マスク
【出願番号】特願2000−59003
【出願日】平成12年3月3日
【公開番号】特開2001−245998
【公開日】平成13年9月11日
【特許番号】特許第3768766号
【登録日】平成18年2月10日
【発行日】平成18年4月19日
【特許権者】ユニ・チャーム株式会社
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の口もとに対する覆い部と、該覆い部の対向両側から後方へ延びる耳掛
け部とからなるマスクであって、
前記耳掛け部が非弾性的に伸長可能な繊維からなる非弾性的に伸長可能な伸長
層と弾性伸縮性を有する弾性層とを積層一体化してなる弾性伸縮可能な複合シ
ートからなっていて、前記非弾性的に伸長可能な繊維が熱可塑性合成樹脂から
なり、少なくとも70%の破断伸度を有していることを特徴とする前記マスク。
【請求項2】
前記非弾性的に伸長可能な繊維が、ポリプロピレンの連続繊維、エチレン−プ
ロピレン共重合体の連続繊維およびエチレン−プロピレン−ブテン共重合体の
連続繊維のいずれかである請求項1記載のマスク。
【請求項3】
前記弾性伸縮可能な複合シートが、前記弾性層と該弾性層の両面に形成された
前記伸長層とからなる請求項1または2記載のマスク。


こちらの検索報告書を特許電子図書館・審査書類情報照会で見てみます。


 審査書類情報照会
 http://www.ipdl.inpit.go.jp/Tokujitu/pfwj.ipdl?N0000=118

 ●種別 B:特許
 ●番号 3768766


で照会ボタンを押して、しばらく待つと


  1. 29.11.2004:検索報告書
  2. 25.01.2005:拒絶理由通知書
  3. 28.03.2005:手続補正書
  4. 28.03.2005:意見書
  5. 20.04.2005:代理人辞任届
  6. 07.09.2005:拒絶査定
  7. 01.11.2005:手続補正書
  8. 15.12.2005:手続補正書(方式)
  9. 24.01.2006:特許査定


が表示されます。一番上の検索報告書をクリックすると、この特許の審査時に
行われた検索式が見れます。


「2.検索論理式」と「3.スクリーニングサーチの結果(提示文献毎の表示)」
を眺めてみてください。


この「2.検索論理式」の中で言うと


 No.1 111件 A62B18/02@(B+C)*[??積層+積層/TX]
 No.3 120件 A62B18/02@(B+C)*[??弾性+弾性/TX+??伸縮+伸縮/TX]-1-2

 ※細かい記号については無視してください。


が「投網戦法」の検索式になります。特許請求の範囲で主張している技術的特
徴は「マスクの耳掛け部が伸張層と弾性層の積層構造」です。つまり普通に考
えれば、


  マスクに関する特許分類・キーワード and 積層
  マスクに関する特許分類・キーワード and 伸張
  マスクに関する特許分類・キーワード and 弾性

  ※ちなみに検索式で利用されているFIの意味は下記のとおり
   A62B18/02@B 防塵マスク
   A62B18/02@C 衛生マスク(花粉症用も含む)


といった検索式が思い浮かびます。当然のことながら、このようなキーワード
を掛ければヒット件数は多くなってしまいます。しかし、「3.スクリーニング
サーチの結果(提示文献毎の表示)」を見てください。


6件の抽出結果のうち5件が集合No.1・No.3で抽出されています。


ヒット件数が多くなればなるほど、その集合の中に抽出したい特許が含まれる
確率は増加します。その分、公報を読む時間が増加してしまいますので、その
トレードオフをどのように考えるかです。


次に「2.検索論理式」の


 No.2 14件 A62B18/02@(B+C)*[??ひだ+ひだ/TX+??襞+襞/TX]-1
 No.7  9件 [(積層*非伸縮*襞)/TX]-1-2-3-4-5-6


を見てください。こちらは前で形成した集合をNOT演算している関係もありま
すが、ヒット件数が非常に絞り込まれています。これは「一本釣り戦法」的な
検索式になっています。


No.2やNo.7を見てキーワード「ひだ or 襞」はどこから選んだのか?という疑
問がわきます。ユニ・チャームの特許の要約(掲載していません)やクレームを
見ても「ひだ or 襞」は出てきません。


実は全文を見ると


【0009】図2は、図1のII−II線断面図である。耳掛け部3を形成し
ている第2シート12は、マスク着用者の肌に対する当接面を形成している弾
性伸縮可能な弾性層16と非当接面を形成している非弾性的に伸長可能な伸長
層17とが重なり合い、一体化したものである。図示例の弾性層16は、弾性
伸縮性の繊維からなり、少なくとも口もとから耳へ向かう1方向に弾性伸縮性
を有する繊維層である。弾性層16の外側に位置する伸長層17は、少なくと
も口もとから耳へ向かう1方向に非弾性的に伸長可能な繊維層である。これら
両層16,17は、それぞれを形成している繊維が熱で互いに溶着することに
よって、または接着剤で接着することによって、または機械的に絡み合うこと
によって、互いに接合一体化して複合シートを形成している。かかる耳掛け部
3は、これを両手に持って少なくとも一部分を前記の1方向に伸長すると、そ
の一部分において弾性層16が弾性的に伸長すると同時に、伸長層17が非弾
性的に伸長する。耳掛け部3から手を放して伸長を解くと、その一部分では弾
性層16がもとの寸法にまで弾性的に戻り、伸長層17は伸びてしまった繊維
が多数のひだを生じながら、弾性層16の寸法にまで縮む。その一部分を再び
伸長するときには、伸長層17はひだが伸びるだけであって殆ど伸長力を必要
とせず、弾性層16を伸長するための力だけで足りる。このようにして、耳掛
け部3は、一部分だけが弾性的に伸縮容易なものになる。


に「ひだ」というキーワードがあります。


この特許に関連する先行技術を抽出するためには「ひだ」というキーワードが
必要だとサッと読んだだけではなかなか判断できません。


このキーワードの選択センスが「一本釣り戦法」の成否を左右します。


なお、6件の抽出結果のうち1件だけ集合No.7で抽出されています。この例だけ
で言ってしまうのは極端ですが「一本釣り戦法」で特許を抽出するのは、なか
なか困難です。しかし、抽出された特許は関連度Yからも分かるとおり、「一
本釣り戦法」であれば関連性が高い特許を抽出することは可能です。



投網戦法と一本釣り戦法の違いについて、概念的そして実例を通して理解して
いただけましたでしょうか?


次回からは実際に昨年の特許検索競技大会の問題を使って、問題への取り組み
方について解説していきます。




━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ショートカット
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・審査書類情報照会

http://www.ipdl.inpit.go.jp/Tokujitu/pfwj.ipdl?N0000=118

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2009-06-03 : 更新