e-patent > コラム > 有名な特許 > ゼロックス・パロアルト研究所(PARC)のマウス特許

現在、何気なく使っているマウス。

 

 

実はマウスだけではなく、現在のパソコン・インターネットで利用されている技術であるマルチウィンドウ、GUI、LAN・イーサネットなどは、米国ゼロックスの研究所であるパロアルト研究所(PARC: Palo Alto Research Center)の発明です。

 

 

当時のゼロックスは複写機分野でリーディングカンパニーであり、さらに次の新たなビジネスを模索するために世界中の優秀な研究者を集めてパロアルト研究所を設立しました。生まれた発明はいずれも先進的な内容であり、現在のパソコン社会・インターネット社会に無くてはならない技術でしたが、結局パソコン・インタネットはゼロックスの事業として確立することはありませんでした。

 

 

ゼロックス・パロアルト研究所で生まれた発明シリーズ第1弾として、マウス特許について紹介します。

 

 

◆特許番号:US3541541 (USPTOespacenet)

◆発明の名称:X-Y Position Indicator for a Display System

◆発明者:Douglas C. Engelbart

◆権利者:Stanford Research Institute

◆要約

An X-Y position indicator control for movement by the hand over any surface to move a cursor over the display on a cathode ray tube, the indicator control generating signals indicating its position to cause a cursor to be displayed on the tube at the corresponding position. The indicator control mechanism contains X and Y position wheels mounted perpendicular to each other, which rotate according to the X and Y movements of the mechanism, and which operate rheostats to send signals along a wire to a computer which controls the CRT display.

◆和文抄録

この発明は、選定された位置に表示位置を変える装置に関する。

操作者が表示パタンを変えるためには表示装置上の変更したい位置を正しく表示しなければならず、ライトペンなどが用いられたが、操作者が手がライトペンでふさがれるため、訂正後の情報を入力する操作が不便であり、変更済の部分をさらにペンで示すなどの不都合があった。この発明ではCRT上でない表面上の運動によりXY位置を調節する機構を与える。

図の実施例により説明すると、Fig1において陰極線表示装置10、コンピュータ14、入力用タイプライタに付属してXY位置指示調整用装置16があり、この指示によりブラウン管上に線状のカーソル20が表示される。16の上には3つのボタンがあって、この直上の文字が訂正されることを示す。ボタンの1つを押すとタイプライタ15から入力された文字がこれと入れ替わる。XY位置指示調整用装置16の構造の詳細はFig2、Fig3に示し、押しボタン22の下にはそれぞれスイッチ34があり、アーム32はX位置ポテンショメータ38、アーム36はY位置ポテンショメータ40を保持し、位置ホイール42、46がそれぞれ軸によりポテンショメータにつながり、これらホイールは溝50、52によって床面17と接しており、XY位置指示調整用装置16を床面上を動かすことによりポテンショメータを作動させ、カーソルを動かすことができる。Fig4は簡略化した電気的接続を示しX、Yの電位を知ることにより所要の位置を検出し得る。

※オリジナルの和文抄録を一部修正しています。ちなみに和文抄録は特許電子図書館の外国特許文献DBから調べることができます。

Us3541541fig1

Us3541541fig2

 

 

これがマウスの基本原理を提案・創出した特許です。マウスというものを当然あるものとして感じている現在、読んでも「なるほど」と感じることができるのですが、マウスというものが存在しなかった1970年代の方が読んだら、どのように感じたのか気になります。

 

 

特許の発明者はDouglas C. Engelbart(ダグラス・エンゲルバード)氏です。氏の経歴等についてはウィキペディアで知ることができます。また、氏へのインタビューについてはPCウォッチに掲載されています。

 

 

 

 

インタビュー記事を読むと、

 

 

この時点で、このデバイスはマウスと呼ばれていたわけではなかったが、研究所の誰かがマウスのようだといったころから、その名前が定着してしまったという。だが、今日に至るまで、その真の名付け親が誰であるかは定かではない。

 

 

のように、マウスという名前がついたのは偶然であり、誰が名付け親か分からないといった話や

 

 

自然なものなど存在せず、自然なものというのは単に慣れ親しんでいるものにすぎないというのがエンゲルバート博士の持論だ。だからこそ、マウスがどんなに不自然なデバイスであったとしても、それによって得られるものが大きければそれでよいわけだ。

 

 

のようなエンゲルバート博士の偉大なる発明者としての思想にも触れることができる。経歴からも分かるように偉大なる発明者・科学者は同世代にはなかなか受け入れられず、ある一定期間が経過した後に、その成果が認められるようになる。その受け入れられない期間にも自分の信念も曲げずに打ち込むことが重要であるということを再認識させられる。

 

2008.12.28